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はじめに・・・このお話は『甘い』という観点からは大きく外れています(^^♪
『切ない』をメインにPVシーンの銀杏をヒントにシーンの一部分とアフリカから戻ったミニョのその後という形で、絡めながら書いたお話なので、『甘さ』を求められる場合は、Uターンしてね☆
秋が、終ろうとしていた。
銀杏並木を歩きながら、ハラハラと舞って落ちた葉陰にいつかここを歩いた事を思い出していた。
大きな背中を追いかけて、歩幅を緩めてくれたあの人に、ふたり、並んで歩いた。
ゆっくりと他愛ない話をしながら歩いた僅かな時間。
突然現れたオンニに驚いたっけ・・・。
あの頃、まだ、ふたりが、お芝居だなんて知らなくて、でも、今だから何となく思うのは、もしかしたら、オンニは、あの頃、本気で好きだったんじゃないのか、とそんな事。
大分、後になって、それとなく聞いたら、『そんな事は、ないわ』と大袈裟に笑って否定されたけど、それは、ミナムオッパが居たからなのか、それとも本心だったのか。
私の顔に溜息を付いたオンニに諭されたっけ。
『そうね、プライドに関わる問題は、あったわ。同じ芸能人だしね、人気商売でしょ、わたしが、妖精と言われている様に、あいつらもエンジェルと言われてるのよ。貴女に意地悪をしたのは・・・そうね、確かに恋に近い感情かも知れなかったけど、振り向かないあいつにプライドを傷付けられたという方が正しいわ・・・けど、それは、恋に似ているけど、恋では無いの。恋をしているんだとしたら、わたしは、やっぱり、ミナムとしているのが恋よ。あいつに感じていた気持ちとは違うもの』そう言って笑っていたっけ。
恋って、何だろう。
この気持ち。
この痛い気持ち。
ピリピリしていただけのおかしな気持ち。
水を飲んでも、収まらなかった。
鼻を押しても・・・ふふ、少しは収まってたのかな。
抱き締められて、あの腕の中で感じていた安らかな想い。
あの顔を見る度に感じていた熱くなる想い。
恋って、そういうもの・・・なのかな。
『苦しいの!?だったら、それは、貴女が彼を大事に思っているという事よ』
オッパへの中傷に一緒に泣いた。
『見たくないの!?それは、貴女が、彼を好きだからだわ』
オッパに近づく女の人が、あまりに綺麗で、落ち込んだ。
『見なさい・・・あいつは、他の何にも見向きもしない・・・けど、貴女には、ああやって笑うでしょ。他の誰でも無いわ・・・あいつが、貴女に向ける笑顔は、他の誰もが見たことの無い顔なのよ。自信を持ちなさい!貴女を愛しているのは、この業界でもトップにいて、その頂点から見下ろしてる様な奴よ!皇帝よ!ファン・テギョン!その人なんだから!!』
そうですね。
と、何度も頷いた。
オンニの言葉に涙が出た。
音楽祭の授賞式で大賞を獲ったA.N.Jell。
光の中にいるオッパ達をカーテンに隠れて、その姿を見ていた。
振り向いて、わたしを見つけて笑ってくれオッパに涙が溢れて視界がぼやけた。
パーティーの間も私の手を握ったままで、婚約者ですと紹介された事に少し驚いたけれど、業界の関係者ばかりのその中で、記者もいたのにそんな気持ちが嬉しかった。
噂は、ずっとされていた。
それは、私も知っていた。
ミナムオッパやジェルミが、時々ふざけてテギョンssiに聞いていたのも知っている。
シヌひょんは、何も言ってなかったけど、時々、私の隣に座って頭を撫でてくれた。
それが、どういう事を意味していたのか、そんな事は、判らなかった。
会話も他愛の無い事。
お茶の話。
天気の話。
買い物に行った話。
遊びに行こうと約束をした。
それに仕事の話も。
そう、仕事の話をしていた。
それなのに。
それなのに、それに気付く事も無く、今日という日を迎えてしまった。
『お仕事・・・ですよね・・・』
『ああ、断わったんだが・・・どうしてもと乞(こ)われて、こんなつもりじゃ、なかったんだが・・・』
仕事。
そう割り切っていた。
他の事は全て、それで良かった。
けれど、こればかりは、エスコートをしただけでは通用しない。
『キス・・・されたの、ですか・・・』
『判らない・・・覚え、て、いない・・・』
本当の事でしょうね。
辛そうでしたね。
傷付いた顔を・・・傷付いて、います・・・よね。
私を見ていた貴方の目に怯えにも似た色を見つけていた。
貴方は、他人に触れるのも触れられるのも嫌う人。
なのに、どこか優しくて、躊躇った指先で、躊躇った指先が宙を舞っても、結局、手を伸ばしてくれる人。
『そんなの貴女限定に決まってるじゃないっ!!』
オンニ。
そうでしょうか。
そうなのでしょうか。
あの人は、本当は、とてもとても優しい人です。
取り繕った優しさじゃ無くて、傷みを知っている人です。
離れていく人の後姿を見続けて、沢山、沢山泣いたのです。
大事な人を捨てさせるのは、それは、愛では無いとそう思っていました。
そう、告げた事もありました。
今、私は、私をあの人に捨てさせようとしています。
恋が・・・終る。
愛が・・・砕け散る。
淋しい秋が、私とあの人を出会わせた季節が、冷たい風を呼び、白い絨毯を敷こうとしています。
真白く、細やかな花が、手のひらで消える季節。
恋の様に。
愛の様に降積る筈の白い塊は、貴方と私の間で溶けて・・・消えた。
『愛していました』
『今もだ!愛してる!!!!』
『私も・・・・・・・・・・・・愛しています』
『だったら、行くな!!!』
いいえ、これ以上貴方の傍にいれば、私はきっと貴方を責める。
貴方のせいじゃないと思っても、今は、まだ、貴方を許せるだけの気持ちを私は持っていません。
貴方にこれ以上辛い顔をして欲しくない。
『お前が居ない方が辛い!!!』
『・・・・・・・・・時を・・・時間を・・・下さい』
時間。
解決してくれるでしょうか。
解決して欲しい。
そう思います。
貴方の胸に戻りたい。
輝く星を見ていたい。
けれど。
けれど、私には、今、まだ、貴方を見るだけの勇気がありません。
一度見てしまった星は、とても眩しくて、遠くにあっても良いとそう思ったのに。
近づいて、近づいてしまったら、欲張りに、なりました。
愛しています。
貴方を。
私を。
愛してくれる貴方を愛しているのに。
淋しい秋のひとり歩きです。