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「いえ、お互い忙しい身ですから、見守ってください」
そんな台詞を吐くのは、何度目だと胸に秘めながら記者に笑顔を振りまいていた。
何度も何度も同じ質問を繰り返され、好い加減にしてくれという苛立ちが、顔には無かったが、体には出ていた。
それを息を呑んで見るのは、勿論メンバー全員で、特にハラハラしていたジェルミの態度は、何かあったと勘繰るに十分な素材を記者に与えてしまっていた。
『イ・ジェルミ!お前っ、何年この業界にいるんだっ!!』
八つ当たりだと誰もがそんな事は判っていた。
けれど、反論するだけの勇気ではなく、反論しても標的にされるのは、やっぱりジェルミで、何を言っても無駄だと既に諦めていた。
申し訳ないとかごめんとかそんな事も思えない程、それは日常的だったから。
『チッ!ったく、何で俺がこんな風に書かれなくちゃならないっ!!』
ミニョとの婚約を発表して1年。
テギョンとミニョの交際は、順調過ぎる位順調だ。
けれど、世間の噂は、いつ別れるのかと下世話な話が多くて、それもこれもここ半年程、ふたり一緒にメディアに出演をしなくなってからだった。
ミニョのデビューから5年余り、モデルの仕事をメインにしながらも歌手活動も始め、単独でオファーが来ることも多くなった。
テギョンもミニョのマネジメントをしながら、A.N.Jellの活動とまたギョンセが持っていた株の一部を譲り受けて、A.N.entertainmentの役員になっていた。
『ったく、俺達がいつ結婚をしようとお前達に関係ないことだっ!』
『あーぁ!?それは、聞き捨てならないねー、俺ってば、一応親族なんだけどー』
助け舟のつもりは全く無いであろうが、話に水を差したミナムの一言は、テギョンを少し冷静にさせていた。
『っとに、ヒョンもいちいち反応しすぎっ!気持ちは判んなく無いけどしょうがないじゃーん』
芸能人の宿命。
そう言ってしまえばそれまでだ。
公人であると、望んでその地位にいるのだからと。
けれど、テギョンの怒りは、矛先が自分で無い事が原因だった。
『それは・・・俺にも解ってる・・・けど、これじゃ・・・』
グシャグシャに握りつぶされた雑誌をテギョンの手から取り上げたシヌが、溜息を吐いていた。
『見せない様に努力をすることだな・・・気持ちが良い物でないのは、確かだ・・・ジェルミの不注意とはいえ、俺達もこんな風に書かれるのは不本意だ』
記事をボロボロに破いてゴミ箱に捨てたシヌが、テギョンと視線を交わす中、玄関で、明るい声が響いたのだった。