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身を、その身を焼き尽す炎は、冷ややかに冷やかな冷気を以ってその身を妬き尽す。
そう告げられたのは、いつだったろうか。そう、確か、あれは、まだミニョをこの腕に抱き、この腕の中で笑う顔を俺に向けられるその愛おしくも可愛らしく、あどけない顔を大事にしなければと思っていたんだ。その顔を涙に濡れるその顔は二度と見たくないと誓い、俺の中の独占欲を封じ込めていた。
『貴方・・・辛そうね・・・』
そんな声を掛けられたのは、テレビの収録終わりの事だった。
『悩んでいるのかしら・・・い、いえ・・・違うわね・・・』
すれ違ったその女は、頭からベ-ルの様な布を被り、異国情緒溢れた長いロングドレスに身を包んでいた。
『な・・・にかしら、もっと、貴方の奥・・・』
突然、近づかれ、胸の前に手を翳されていた。何だと内心慄(おのの)きながら見下ろせば、その眼は閉じられ、何かを感じ取っている様なそんな仕種をしていたが、身に覚えの無い、まして初対面の相手にそんな事をされ、言われる事に煩わしさを感じて立ち去ろうと声を掛ける為に口を開けた途端、その女と目があった。
『ああ、ごめんなさい・・・』
合ったと思った目を覆い隠し、女はまた瞼を閉じていた。しかし、一瞬でもこの眼で見た瞳は、印象を残すに十分な色で、ガラスの色した色無きその瞳には、一切の光も生(せい)も無かった。
『ふふ、驚かせたのね、ごめんなさい、良いのよ、誰でもそう思うわ』
諦めとはまた違う、諫めるでも無く、女は閉じた目に手を当ててそう言った。俺の行動がまるで見えている様に。現に俺は、踵を一歩引いて、上半身も後ろに引きかけ、女を制するように腕が上がっていた。
『あっ、す、すみません・・・・・・』
謝るのも冒しなものだったが、咄嗟に謝罪をした。それに女も目尻が下がりクスクスと笑いだしていた。
『ミアネ、私が悪かったの、突然ごめんなさい・・・でも、気になったので・・・・・・』
気になったと言いながら、女は、今度は真っ直ぐ、瞼を上げて俺を見た。白い、真っ白いその瞳は、本当に唯のガラス玉の様で、何も写していないんだという事がはっきり見て取れたが、恐ろしい感じは無く、かといって気の毒に思うものでも無く。
『あ・・・なた・・・そう、何だか・・・』
女がまた俺の前に手を翳して、口を開いた時、俺を呼ぶジェルミの声と女を捜していたらしいスタッフの声が聞こえた。
『ああ、ヒョン!居た居た』
『シュオンssi!捜しましたよ!』
俺達はそれぞれに反対方向へ振り返り、彼女とはそれきりだった。
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それから暫く、彼女と出会った事も忘れ、いつもの様に撮影の為にスタジオに向かっている途中、すれ違ったテレビ局のスタッフの口から、ミニョの名前を聞いていた。
『ねぇ聞いた!?この前のコ・ミニョssiの撮影』
『何かあったの!?』
『何かというかさ、あの人って、皇帝の恋人でしょ』
『ああ、そうらしいわね』
『皇帝が傍に居るのがいつも当たり前らしいんだけどね、その日さぁ・・・』
すれ違ったのが俺だと気付いていないその女達の話にその場を足早に去ったのだった。
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