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『初めての事だから混乱するのも判る・・・俺だって正直、嬉しいが、仕事への影響を考えてた・・・俺達だけの問題じゃぁないからな・・・だからって産まないという選択肢は絶対無い』
『なっあっ、ある訳ありませんっ!ひとりでも産みますっ!』
『ふんっ、そんな事絶対させてやるかっ!』
『うっ・・・横暴・・・』
『うるさいなっ!俺の子だっ!俺のっ!おっ前知らないだろう!お前があちこちで取り上げられる度に俺がどれだけ作っちまおうかと思ってたかっ!』
『なっ・・・しっ知りませんよー、なんでっそんな事・・・』
『結婚しちまおうかとも思ってたんだけどな・・・現実それもなかなか出来なくて、この前の契約更新の時に書き足しといて良かったな』
『はぁぇっ!?』
『仮に妊娠が発覚した場合、その場で最善を講じるって一言付け足しといたんだ』
『はぇっ!?』
『ふっ、避妊してたってもしもは、有り得るからな』
『は・・・そ、れって・・・やっぱり計画的・・・に・・・』
『違うっ!世の中何が起きるか判らないって事だっ!予測対応しただけだっ!俺は聖職者じゃないからなっ好きな女を前に何もしないなんて出来ないんだよっ!』
『好っ・・・』
頬を染めて俯いたミニョの顎をテギョンが捉えていた。
上向かされた顔は、降りて来た唇を受け入れ、再び抱き寄せられた。
『俺は、お前と違って親を憎んでいるからな・・・振り回されて邪魔くさくていなくて良いと思ってた・・・
けど、お前が言う様に親が居なければ俺もいない・・・生まれてきてくれてありがとうなんてそれは、親が子供に言うべきだろう・・・オモニは、それを絶対に言わないと思ってたんだ・・・』
長い息を吐き出される間をミニョは黙ったまま待っている。
『今回、オモニが俺に話を持ち込んで来た時に過去を償いたいと言ったんだ・・・子供がいる事を認めたいと・・・今更そんな話をされても俺には何の得も無いしむしろまた利用されるのかと思った・・・けどお前達の為だと言われて考え直した』
『わ・・・たし達ですか!?』
『お前が俺と結婚をすれば、当然親の事も調べられて書かれるだろう・・・以前、施設育ちだとミナムが書かれそうになったのをアン社長が止めたんだが、その時、ジェヒョンssiの名前を一度だけ出したんだ。それとオモニが以前テレビでジェヒョンssiの話をしたことがあって、お前達との関係を聞きに来た記者もいたそうだ・・・オモニの新曲発表は、今後の話題性も含めてジェヒョンssiの名前が必要で、あー、つまりだな・・・A.N.Jellの次のアルバムのリードをコ・ジェヒョンの曲でやるんだ・・・俺がアレンジし直してミナムに歌わせる』
『はぁ・・・』
なんでと考え込むミニョの視線を受け止めたテギョンが、顔を逸らした。
『チッ・・・ったく・・・こんな戦略話をお前にしたってどうにもならないんだよっ・・・』
『むっむぅ、オッパ失礼ですっ!教えてくれたって良いじゃないですかぁ』
『チッ!だからなぁ合わせるつもりだったんだっ!ジェヒョンssiとミナムのソンムルって事でっ!』
『えっ!?』
『バージンロードを父親と歩かせてやろうと思ったんだっ』
『ふ、ぇっ!?』
『ふんっどうせミナムと歩く事になるからなっ!それなら音楽で演出してやろうとスジンssiの歌もオモニから貰ってるから・・・』
大粒の滴がまた浮き出ていた。
大きな目から零れるそれは、感動の様相だ。
『だーかーらー!泣くなっ!』
『うっ・・・っく・・・だっ・・・っ』
『だってと言うなっ!俺だって色々考えてるんだっ!』
『そっ、そんなの解んなっ』
『解れっ』
『うっ、だって、オッパは、結婚式なんてしなって』
『はぁ!?なんの事だよ!?』
『・・・ミッミナムオッパがッ、オッオパは結婚式なんて嫌がるに決まってるからせいぜい写真撮って婚姻届け出して終わりぃだって・・・』
『あ!?おっ前、それを信じたのか!?』
抱き締める腕を強めたテギョンにミニョの顔が恥ずかしそうに膨れていた。
『信じたんだな』
『え・・・っと・・・・いや・・・そ・・・あは・・・あはははは』
『ふ・・・ん・・・面倒くさいとは思ってるけどな・・・でも、お前はしたいだろう!?』
膨れた頬を引っ張られたミニョの乾いた笑いにテギョンは呆れ顔だ。
『中山聖堂でしたいんだろう!?院長様や他のシスターの前で挙げたいんだろう!?お前を育ててくれた人達の前で』
頷くミニョを睨みつけるテギョンは大きな溜息を吐いた。
『チッそれくらい俺だって考えてる!俺に合わせる必要は無いっ!もっと我儘を言えっ!』
『うー、だって、オッパ忙しいですし・・・』
『忙しいけどそれとこれは別だろう!お前、一応人生の一大事だぞ』
『そっ・・・ぅん・・・オッパもそう思ってます!?』
『あ!?』
『面倒くさいんでしょう!?』
『ああ、面倒だ・・・けど、俺だってアッパやオモニに祝って欲しい・・・ぞ』
『本当!?』
『ああ、以前よりは、そう思える様になったからな』
夕陽が、すっかり落ちていた。
赤い陽は、いつの間にか月光に変わり、闇の中で顔を見合わせたふたりは、座り直して外を見つめていたのだった。