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Far away, to you, I want to say(お家に帰ろう)!?(13)

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『知ってる』
ミナムからのビデオチャットを淡々と聞いているテギョンは、モ・ファランの特集記事で自分が勘繰られる事を既に承知していたと応えた。
(知ってるって!いつ知ったのさ!)
画面の半分を埋め尽くすミナムの横で、文字を追っているテギョンは、SNSの書き込みをチェックしながら酒を注いでいる。
『記事になる前だ。オモニがアン社長に相談をした・・・俺にも連絡があった・・・』
(知ってて止めなかったのかよっ)
『止める・・・理由が無い・・・子供を産んだと認めているが俺だとはっきり告げてる訳じゃぁない・・・』
(そっ、それは、そうだけどさっ・・・)
しどろもどろで俯いたミナムにグラスを煽ったテギョンは、画面を切り替えて検索バーにコ・ミニョと入力した。
『お前の心配は、先週の記事だろう・・・コ・ジェヒョンとイ・スジンの事を書かれた・・・』
黙って画面を睨むミナムにテギョンは、淡々と続け、ミニョが心配かと聞いた。
(あったりまえだろう!俺はともかく!ミニョは、大事な時期だろうっ!ヒョンが付けた後ろ盾があるにしろ、在る事無い事書かれてたまるかよっ!)
『お前達の事は記事にはならない・・・』
(そんなの解るかっ!記者を抑えても一般人まで抑えることは出来ないんだぞっ!)
『ああ、だが、そんなのを気にしていたらこの仕事は出来ない』
正論は、ミナムの口を更に噤ませた。
そんな事は解りきってるという顔でテギョンを睨むミナムは、言葉を探して、不満そうにしていたが、ドアの音にミニョかと聞いた。
『ああ、戻って来たな・・・』
振り返ったテギョンは、紙袋を抱えて微笑むミニョを手招きし、ミニョは、画面のミナムに驚いた。
『あれー、オッパぁ・・・何かあったのですかぁ』
旅先でテギョンとミナムが会話をしている事に驚くミニョは、紙袋を置いてテギョンの膝に座った。
(ああ、緊急事態だ!お前とヒョンの結婚がスクープされる)
『へっ!?』
きょとんとミナムを見たミニョは、驚いてテギョンを見ている。
『スクープじゃぁない・・・予定調和だ』
ミニョの髪を撫でながらマウスを動かしているテギョンは、画面の半分を見る様に促した。
(プロポーズもしてない癖に何の予定調和だよっ!俺に言ったことはデタラメかっ!)
『デタラメじゃないさ。それにお前の許可は取っただろう』
(結婚することは認めてやるよっ!でもそれもこれもミニョの許可はまだなんだろっ!)
ミナムの声を聞きながら画面の半分を見ているミニョは、テギョンが指差した先を見つめ、そこを目視していて、黙読していた顔がテギョンを振り返った。
(って!おいっ!こっちの話はっ!聞いてんのかよっ!)
『ああ、聞いてるさ・・・けど、お前にとやかく言われる事じゃない・・・俺とミニョの問題だ・・・』
(チッ!そんなの解ってるさ!俺が何を言おうとミニョがあんたをどう思ってるかって事の方が重要だ!けどなっ!オモニやアッパまで巻き込んだあんたの母親を許せないってのは覚えておいてくれっ!)
プチンと切れた画面は、テギョンがミニョに見せていたウィンドウをたちまち大きく広げ、文字の下に載っている写真が、画面一杯に拡がっていた。
『ヒョ・・・え!?こ・・・れ・・・』
『覚えがあるだろう・・・』
コ・ミニョの名前で検索をされていた記事のひとつにテギョンの素行が問題視された記事が載っている。
それは、ミニョが仕事先で駈け込んだ病院の写真と記事だ。
『腹痛を訴えたんだろう・・・』
『あ、ええ、えと、あの、食べ物が合わなかったみたいで・・・』
『同行してたスタッフに聞いた・・・お前と病院に行った時に多分撮られていたと・・・』
『え、でも、唯の腹痛ですよ・・・』
『ああ、だが、この受診した科が・・・な・・・・・・』
カチリという音をさせて病院のページへ遷都したテギョンは、構内図を見せミニョに説明をした。
『産婦人科だったらしい・・・』
『えっ!?』
狼狽えるミニョは、体を固くして画面を見つめている。
『お前・・・・・・こういうのを聞くのは、どうかと思うんだけど・・・』
『にっ、妊娠はしていないですよっ!』
テギョンの思考に慌てたミニョは、クスリと笑われてきょとんとした。
『ふ、そんなの俺も解ってる・・・けど・・・絶対は無い・・・だろう・・・』
それは、テギョンがアン社長に言われた事だ。
絶対は無い。
絶対は、テギョンがどんなに気を付けてもミニョをどんなに管理していても無いとは言い切れない。
何故なら、それは、テギョン自身にも覚えのある事で、どんなに自分を律してもどんなに理性で抑え込もうとしても愛しいものを前に感情というものは、時折、そう、ほんの時折、抑えきれず欲望という大きな渦に呑み込まれ、人体というものは、思いもかけない状況を呼び込むのだ。
『それにお前、無理をしていただろう!?』
『えっ!?あ・・・ああ・・・気付かれていたのですね・・・』
ミニョのお腹をクッときつく抱いたテギョンは、そこを抑えながら頬に口付けた。
『出来ても良いと思っているんだ・・・』
『えっ!?』
『神様の気まぐれが、今、俺に降りて来ないかなと思う時がある・・・』
『ヒョ・・・』
肩越しに振り返ったミニョは、見下ろすテギョンの俯く顔に手を伸ばすと見上げた瞳と目を合わせ、微笑んでその顔を傾けていたのだった。