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Far away, to you, I want to say(お家に帰ろう)!?(14)

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日程は、あっという間に過ぎて行き、帰国を明日に控えて、テギョンは、ミニョを砂浜に誘っていた。
一週間。
やっぱり短かったと剥れたミニョに笑ったテギョンは、軽い口調で結婚しないかと呟き、ミニョも軽く良いですよと返していた。
『ふふ、ロマンチックじゃぁないってジェルミにまーた言われちゃいますねー』
『俺にロマンチックを求める方がおかしいだろう・・・』
『えー、オッパは十分ロマンチストだと思いますよぉ・・・詩人さんだし・・・』
『ふ、そうか!?それは、光栄ですコ・ミニョssi!』
恭しく腹に手を添えて頭を下げるテギョンにミニョが、慌てている。
『ぅううんっ!オッパ!嫌味に見えますっ!』
肩を掴んであげさせたミニョは、テギョンに肩を抱かれ、再び歩き始めた。
『ふ・・・・・・夢なんて、な、求めてる内は手に入らないのさ・・・手に入れる為の努力をして辿り着くものだ・・・偶然が運んでくる奴だっているだろうが、大抵の人間は、努力をしているからそれが手に入る・・・お前も努力をしてるだろう』
『うっ・・・いひゃい・・・っです』
潰された鼻にミニョが膨れ、大袈裟に笑ったテギョンは、小さな埠頭の階段に向かった。
『鼻を潰して感情コントロールね・・・信じるお前もお前だけどな・・・』
『えっー、結構、効いてますよー、緊張も解けるし・・・』
鼻を擦り、自分で上げて見せるミニョは、テギョンに向かって笑い、赤くなった鼻を撫でている。
『まぁ、俺も結構助けられたからな・・・そういう意味ではマ・室長に感謝だな』
『ね、オッパ・・・聞いても良いですかぁ!?』
疑問符を浮かべた顔でテギョンを見たミニョは、ファランの事をと続け、頷いたテギョンは、ホテルの銘が入ったボートが並べられた埠頭を見渡しながら、その先の灯台を振り仰いだ。
『ああ、俺達が帰国をした途端、俺とお前の結婚がスクープされる予定だ・・・俺達、A.N.Jellは、今、アルバムを出したばかりで・・・コンサートの準備もしているが、テレビへの露出が増えるだろう・・・モ・ファランは、再起を狙っているんだ・・・最近は、懐かしがられて番組出演も増えているからな・・・それに俺の噂話を知っているだろう・・・マ・室長の創作だけどあれはあれであながち嘘じゃない・・・だからといって肯定するつもりも無いけどな・・・オモニが子供を産んだことを認める事で、俺と同世代の奴の中には、噂をされる奴も出てくるだろう・・・けど、俺の噂が一番近いからな・・・』
『噂ですけど・・・本当ですものね・・・』
『ああ、だから、お前との結婚をスクープして貰うんだ』
埠頭の先端の灯台へ入ったテギョンは、人ひとり通れる階段を昇り、ミニョに手を伸ばした。
『そ、それも嘘でって事ですか・・・』
少し、傾斜のきつい階段に下を見たミニョは、テギョンの袖にしがみ付いて笑われた。
『俺と結婚したいのか!?』
『えっ!?そ・・・それ・・・は・・・』
上目で見上げるミニョにクスリと笑うテギョンは、柔らかい笑みで、扉に手を掛けている。
『俺は、したいけどな・・・でも、お前の仕事を当分は、辞めさせられない・・・そうだな・・・少なくともあと半年は、どうにもしようがないんだ・・・』
海に向かって開かれた扉は、遠くに見える地平線のすぐ上に太陽を乗せている。
『お前は、いつも待ってばかりだな・・・俺が気付くまでずっとそうしてるつもりか!?』
眩しそうに太陽を見たミニョは、朝陽に向かって十字を切っている。
『・・・・・・ヒョンの道標でいられたらいいなぁとは思ってます・・・けど・・・月はいつも出てる訳じゃぁないから・・・いつも見える訳じゃないので・・・』
『星だっていつも見える訳じゃぁないぞ!お前が、俺の目の前にいれば良いんだ!俺の見えるところにいて欲しいのは、コ・ミニョ・・・お前だけだ・・・』
『ヒョ・・・』
ミニョの手を掴んだテギョンは、ぐるりを囲む通路をゆっくり回って行く。
『いい加減オッパに統一しろっ!』
立ち止まり振り返ったテギョンにミニョは俯き、震わせた肩を掴まれた。
『うっ・・・オッパ・・・』
上目でテギョンを呼ぶミニョは、くるんと体をひっくり返され、砂浜に向けられながら目を覆われた。
『ふ、サランヘヨ、ミニョ・・・・・・これは、俺からのソンムル(プレゼント)だ!』
『えっ!?』
背中から抱きしめられ、頬にキスをされて目を覆う手を外されたミニョは、テギョンの指差す方向に目を向けた。
『えっ・・・あ・・・れ・・・・・・』
『よく見ておけよ!二度としてやらないからな!』
砂浜に描かれるラブレターは、今もまだ、作業の途中だ。
工事用の大型機械が、砂を抉り、砂を運び、テギョンからミニョへと書かれた文字は、プロポーズ以外の何物でもない。
『えっ・・・オッ、パ・・・』
『ふ、ん・・・昨日から書かせてたんだけどな・・・全部は終わらなかったな・・・』
それでも、許可をしてやるという単語は、しっかりハングルで出来上がっていた。
『チッ!英語の方が簡単だったか・・・』
柵に身を乗り出すミニョの後ろで大きな舌打ちをしたテギョンにミニョが、大きく首を振った。
ポロリと零れた涙がひとつ、埠頭のアスファルトに落ちてゆく。
色を変えた地面が一瞬で元に戻る束の間、振り返ったミニョは、テギョンの胸に顔を埋めて泣きじゃくっている。
『うっ、っっく、ひっ・・・っぱぁ・・・・・・』
『ふ、ミニョ・・・許可してくれるだろう!?』
コクコクと深く力強く何度も頷くミニョの髪を撫でながら、テギョンは、まだ、作業の続く浜辺を眺めていたのだった。