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Far away, to you, I want to say(お家に帰ろう)!?(10)

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『えっ・・・・・・・・・』
チケット片手に乗り込んだ飛行機でシートに座って、さて何をしようときょろきょろしていたミニョは、サングラスを掛け通路の反対に座ったテギョンに驚いていた。
それもその筈、送るのは一緒だが、ここから先は別行動で便も違うとマ・室長に聞かされていた。
『えっ!?ヒョン・・・ニ・・・ム!?』
間違えたのかとチケットを取り出すミニョは、手元を眺めて横を見るを繰り返し、挙動不審なミニョにアテンダントが、困りごとかと声をかけてきたが、事態をかろうじて呑み込んだミニョは、何でもないと返した。
『む・・・ヒョンの気まぐれでしょうか・・・』
小さく小さく呟いてシートを倒すミニョは、隣でさっさとヘッドホンをつけて寝たふりを決め込んでいるテギョンを覗き込んで仰向けになった。
『気まぐれじゃなくて計画だ』
聞こえないだろうと思った呟きに返事が返った事で、ぎょっとしたミニョは、横を向こうとして、通り過ぎたアテンダントを見止めてブランケットを引き上げた。
『ま、まぁ良いです・・・わたしも寝ます』
呟いて横を見て、忙しく考え込んでいたミニョだが、そのうちすっかり眠ってしまった。

★★★★★☆☆☆★★★★★

『ったく、いつでもどこでも寝汚(いぎたな)いというか・・・どんな夢見てやがるっ!』
ピンとミニョの鼻先を弾いたテギョンは、身じろいだミニョに微笑んで、外していたサングラスを掛けさっさとランプ((英語※意味;傾斜路)=タラップ(オランダ語※意味;梯子(はしご)))を降りてしまい、痛みに目が覚めたミニョは、周りを見回して到着している事を知り、微笑みながら近づいて来たアテンダントに礼を言って鞄を肩に掛けて外に出た。
『ふわぁーよーく寝ましたー』
階段上で気持ちよさそうに伸びる姿を見上げるテギョンの隠れた瞳を見るミニョは、また挙動不審で、きょろきょろしている間に歩き出した背中を見つめて首を傾げている。
『・・・な、何かしたでしょうか!?』
ジェルミお得意のポーズをとって後ろをおそるおそる歩き始めた。
『ったく・・・なーにが良く寝ましただっ!同じ便に乗ったのも気まぐれかとかっ!ふざけるなっ!俺は、お前の為に根回ししてやってるっていうのに・・・何であいつはああも軽いんだ!』
ぶつくさ文句を言ってるテギョンの背中を見つめるミニョは、到着時に起こされなかった事を考えていた。
いつもなら、アナウンスと共にアテンダントが何かしら声をかけてくる。
少しだけ赤くなった鼻を持ち上げたミニョは、手続きを済ませてゲートを潜ったテギョンの一度も振り返らない背中を小走りで追いかけてた。

★★★★★☆☆☆★★★★★

『ヒョーン!ヒョンニムッ!待って、待って下さいよー』
大きな声と重そうにスーツケースを引っ張る姿に見ない振り聞こえない振りのテギョンは、タクシー乗り場で、行先を告げて自分のスーツケースを仕舞うと腕を組んで近づいてくるミニョを見ていた。
『チッ!さっさと乗れ!』
スーツケースを奪った右手が軽々持ち上げ運転手に渡した左手が、きょとんとするミニョの背中を押し込んだ。
『行ってくれ』
『OK!ユーガイズーハニームーン!?』
陽気に話しかけてきた運転手に短い返事をしたテギョンは、隣でガイドブックを拡げ始めたミニョをちらりと見ると溜息を吐き出し、外を見つめた。
南国特有の風が全開にされた窓から髪を揺らし、頬を撫でる。
パラパラ紙を捲る手元に伸ばされた手が、小さな手を包み、隣を見る目に笑顔は零れても顔は向かない。
閉じられた本の上で、絡まった指先に深く、柔和な笑みが零れていたのだった。